衛門三郎の「再来伝説」、石手寺
石手寺は松山市にある真言宗のお寺です。
夏目漱石の『坊ちゃん』で知られる道後温泉の近くに位置しています。
石手寺は四国八十八箇所霊場の第五十一番札所で、四国遍路の元祖といわれる衛門三郎の「再来伝説」がもとになって名付けられたお寺です。
衛門三郎は平安時代に生きた伊予の豪農で欲深い男でした。
家に来た托鉢僧の鉢を叩き割ってしまいます。
実はこの僧こそ、弘法大師その人でした。
鉢が8つに割れると同時に僧も消えてしまいました。
その後、毎年1人ずつ衛門三郎の子供が亡くなり、とうとう8人いた子はすべて絶えてしまいました。
悲嘆にくれる衛門三郎の夢枕に大師が立ちました。
その時初めてあの僧侶が弘法大師だったことに気付いた衛門三郎は大師に再び出会うため、四国遍路の旅に出ます。
20回巡礼を繰り返しても出会えず、衛門三郎は逆打ちを行います。
そのうちに、病気になって虫の息となってしまいました。
そこに弘法大師が現れ、衛門三郎に「望みはあるか」と訊ねます。
衛門三郎は泣いて自分の愚かさを詫び、今度は河野家に産まれたいと言い遺して死にました。
弘法大師は衛門三郎の手に「衛門三郎再来」と書いた小石を握らせました。
その翌年、伊予国を治める領主・河野家に男の子が生まれます。
その子は左手を握ったまま、決して開きませんでした。
そこでお寺の僧に相談し、祈願してもらったところやっと手が開き、そこには「衛門三郎」と書かれた小石が握られていたのです。
これが遍路の元祖、「衛門三郎の再来伝説」です。
小石を握った手を開く祈願を受けたお寺はその後、「石手寺」と名付けられました。
石手寺の創建は天平時代と言われています。
もとは伊予の太守が夢のお告げによって熊野権現を祀ったことが起源と伝えられています。
その後聖武天皇の勅願所となりました。香園寺にもゆかりのある高僧、行基が薬師如来を彫刻し、本尊として開山したと言われています。
最初は真言宗ではありませんでしたが、弘法大師が訪れた際に真言宗に改宗されました。
そしてその後、衛門三郎の再来伝説が生まれたのです。
石手寺は平安時代から室町時代にかけて非常に栄え、今でもたくさんの国宝指定を受けた宝物を残しています。
観光地としても大人気で、ミシュランガイドにも掲載されました。
また石手寺の大師堂は「落書き堂」と呼ばれています。
ここは古くから多くの人々が落書きを残しており、道後温泉ゆかりの正岡子規や夏目漱石も落書きしていたそうですよ。
訶梨帝母天堂(かりていもてんどう)
石手寺には、訶梨帝母天堂(かりていもてんどう)というお堂があります。ここは石手寺が熊野十二社権現だったころからあり、鬼子母神を祀っています。
鬼子母神はインドの女神で、鬼神でした。
人の子をさらっては食べていたため、仏様が仏罰をくだし、鬼子母神が最も愛していた末の子を隠してしまいます。
鬼子母神は我が子がいなくなって初めて、自分がしてきた罪の深さを思い知りました。
以後仏道に帰依し、子宝・安産・育児の女神となりました。
子宝石の信仰があり、鬼子母神の石を持って帰ると良いと言われています。
子供が無事に産まれたら、生年月日と名前を書き、新たに2個石をそえて礼参りに行きましょう。
道後温泉を主として周辺に多くの温泉施設があるので、ぜひ一度訪れてみてください。
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